性被害に程度の差などないに等しい
わたしが心理学生をしていたときの話です。
ある講義で「来週は近親相姦についてです」と先生。教室内はすくなからずどよめきました。
そして、その当日。配布された資料に挙げられた事例は、義兄にキスをされたり胸を触られたりした――というものでした。
その講義の最後。先生が言いました。
「みなさんは、この事例を“こんな程度のこと、たいしたことないじゃないか”と思ったかもしれません。近親相姦と聞いて“もっとすごいもの”を想像していたかもしれません。
ですが、被害者にとって、どんな行為であれ、心の傷は深いものなのです。
それを理解してもらうために、今回はあえて“この程度の”事例を取り上げました」
図星でした。わたしたち生徒は、事例として取り上げられるのは、セックス行為=ペニスを膣に挿入する行為があるものがくると想像していて、そうでない事例が取り上げられたことに、軽々しい言葉を使うと、肩透かしをくらったような気分になっていたのです。
そして、そんな自分を知ることで、性被害について“程度の差”をもって「たいしたことないじゃないか」などと考えていた自分に気付かされたのです。
わたしがこのブログを通じていただくメールのなかで、性被害に遭われた方が、ご自身の被害体験について「軽いものなのですが」と書かれていることがあります。
またたとえばですが、植草元教授の一連の行為を「たいしたことないじゃん」と笑いごとにしてしまうひとがいます。
しかし、わたしは思うのです。性被害に程度の差などないに等しいと。
そして、そういった“程度の差の意識”が被害者感情を麻痺させ、回復のプロセスをさまたげるのです。
わたしが常々口にしている持論ですが、心の傷を癒すための第一歩は、つらいことをつらい、悲しいことを悲しい、その感情をあるがままにかんじ、受け入れることからはじまります。だから、それを阻害することはイコール回復を阻害することとなってしまうのです。
被害者が「たいしたことない」と言っているからたいしたことないのでは? と思う方もいらっしゃるでしょう。
よく考えてみてください。社会に浸透してしまっている“程度の差の意識”は、わたしたちひとりひとりの意識のなかに入り込んでしまってはいないでしょうか? 「たいしたことない」と言っている被害者も、そのひとり。言ってみれば、「たいしたことない」と思い込まされているにもかかわらず、それが自発的な感情だと錯覚してしまっているのではないでしょうか。
性被害に限りません。いじめだってなんだって。
「たいしたことのない」被害なんてないんです。
被害を程度の差で語ることは、被害者から、“つらいことを「つらい」と思う自由と権利”を奪う危険性があるものなのです。
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コメント
被害者ではない人が「この程度ではまだ大したことはない」と考えて聞き流すことほよろしくないと指摘し啓蒙していることはいいと思います。
ただ、もっと非道い、完全?な被害を受けた人が「キスされた、胸を触られた程度ではなく最悪のことをされた。非道すぎる」と悲嘆し怒っているのも事実です。
投稿: George | 2006/11/30 12:46
★Georgeさま★
コメントありがとうございます。(自白も(笑))
なるほど、Georgeさんのおっしゃることは現状だと思います。
ただそうやって程度の差を意識して比べることが、ご本人にとって余計につらさを増幅してしまっているのではないか。回復へ向かうときにどうなのか。
という点を考えると、わたしといたしましては、いささか疑問が残ってしまうところなんですよね。
投稿: 大川内 麻里 | 2006/12/01 13:55