熊本市が慈恵病院に「こうのとりのゆりかご(俗称:赤ちゃんポスト)」の設置を許可、5月にも運用がはじまる見込みです。
熊本市は大英断を下したと思います。
さて考えるべきは、仮に「こうのとりのゆりかご(俗称:赤ちゃんポスト)」に赤ちゃんが預けられたとして、その子がその後どうなるのか、ということ。
「赤ちゃんポストという名称が云々」「育児放棄の助長」と、まるで論点のずれたところでの議論だけが先行して、「赤ちゃんのその後」と、それをすこしでも幸せな道へと導くために慈恵病院が備えている点について、ほとんど伝えられていないので、ここでお話します。
赤ちゃんのその後。
不妊に悩むご夫婦などの手へ、というのはみなさんもご想像されるでしょう。
その方法として「養子縁組」と「里親」という、ふたつの方法があります。
「養子縁組」と「里親」とは、似て非なるものです。
まず「里親」制度とは、行政からの委託というかたちで子どもの養育を引き受けることです。
里親になりたい人は児童相談所などへ申請し、子どもを養育するに必要十分な条件をクリアしているか、審査を受けます。
慎重に審査された上で、里子の斡旋を受けるというわけです。
次に「養子縁組」について。
「養子縁組」とは端的に言うと、血縁上は親子ではない者同士を戸籍に入れ、親子関係を発生させるものです。
これには「普通養子縁組」と「特別養子縁組」とがあります。
「普通養子縁組」では、戸籍上でも、法律的にも、実の親(血縁上の親)と子の親子関係は存続し、戸籍上も「養子」「養女」と記載されます。
原則として、離縁も、養親と養子の合意によって行うことができます。
一方、「特別養子縁組」では、戸籍上でも、法律的にも、実親と子の親子関係は絶たれ、戸籍には、実子の場合と同様に、「長男」「長女」といった記載がなされます。
原則として、協議離縁(当事者の話し合いによる離縁)はできません。養親による虐待などがあって、実の親が引き取ることのできる場合は例外で、しかるべき手続きによって離縁が認められます。
子どもが実の親を知る権利の保護、近親婚の防止という観点から、手続きをとれば、実の親がわかるようにはなっていますが、養子ということが容易にはわからないようにされているのです。
赤ちゃんが「こうのとりのゆりかご(俗称:赤ちゃんポスト)」に預けられた場合、児童相談所から乳児院に行き、1歳になれば養護施設へ入ることになります。
赤ちゃんは、そこで養親や里親に引き取られるか、養親・里親が見つからなければ、18歳まで施設で育つことになるでしょう。
さて、慈恵病院では、まず、病院の玄関やポスト脇に、公的な相談窓口の連絡先を案内するとしています。
また、ポスト内には、預けにきたお母さんに対し「相談してください」とのメッセージを書かれた手紙も置くそうです。
そして、相談があれば悩みを聞き、子どもを手放すことを思いとどまるよう促します。
「いまは育てられないが、先々引き取りたい」といった場合には、児童相談所を通じていったん乳児院に預けるなどの方法があることも教えます。
また、先述の「特別養子縁組」についても伝えるそうです。
養子として引き取られた先でも、実子とおなじような(法律上・戸籍上の)扱いを受けることができるんですよ、と。
安易に赤ちゃんを預かるのではなく、事前にこういった最大限の努力があるのです。
「特別養子縁組」という制度は、1988年につくられました。
戸籍上、養子にも実子とおなじように扱われることを目的としてつくられたこの制度。
成立の裏には、実は、今回の慈恵病院の英断にも似た、あるひとりの医師の行動があったのです。
次回は、それについてお話をします。
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「「赤ちゃんポスト」という“通称”に踊らされないでください。事の本質が見えなくなってしまう危険性があります。」
「世論はこうして作られてゆく―「赤ちゃんポスト」という“通称”の罪。ないがしろにされる「こうのとりのゆりかご」の本質論」
* 大川内 麻里のサイト OkawauhiMari.net *
* http://www.okawauchimari.net/ *
※参考
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