特急車内で強姦を繰り返す~ なぜ彼らは通報しなかったのか? 通報しなかった、通報できなかった乗客の心理
今日は、この事件をテレビ報道で見て、あまりにも卑劣極まりない犯行に、久々にPTSDの症状と思しきが出てしまった。
特急トイレで女性暴行、36歳男を再逮捕…乗客知らんぷり
4月22日21時9分配信 読売新聞
JR北陸線の特急電車内で昨年8月、女性客に乱暴したとして、大阪府警淀川署は21日、滋賀県湖南市の解体工事業、植園貴光被告(36)(強姦=ごうかん=罪などで公判中)を強姦容疑で再逮捕した。
同じ車両には約40人の乗客がおり、異状に気付いた人もいたが、植園被告にすごまれ、制止や通報ができなかったという。
植園被告は昨年12月、JR湖西線の電車内と大津市内の駅トイレで2件の女性暴行事件を起こしたとして起訴され、今月6日、大津地裁で開かれた初公判で起訴事実を認めていた。
調べでは、植園被告は昨年8月3日午後9時20分ごろ、特急「サンダーバード」(9両)が福井駅を出発した直後、旅行客の大阪市内に住む20歳代の女性 の隣に座り、「声を出すな、殺すぞ」と脅して体を触り始め、同10時45分に京都駅を出発後、トイレに連れ込んで暴行した疑い。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070422-00000312-yom-soc
性犯罪については、いまは病気の影響や、もろもろの事情で、精神的に書けなくなってしまっているわけだけれど、勇気を持ってすこしだけ書きます。
ニュースの「知らんぷり」という見出しに踊らされないでください。それは報道する側が用いた表現であって、実際の状況が「知らんぷり」と言われるような状況であったかには大きな疑問が残ります。
なぜだれも助けなかったのか。通報しなかったのか。
という乗客を
責めたてる意見が聞かれますが、そんな議論はナンセンスです。
それよりも、むしろ、こういった、前科もわかっているだけで9件もある、しかも仮釈放のわずか1ヵ月後にこのような卑劣な強姦事件を繰り返す性犯罪者。
生来的な脳機能異常によって、性衝動の制御が不可能なのではないかと疑われる性犯罪者が、なぜ何度もこのよ うな犯罪を犯しえる状況にいられたのか。
そして、このような犯罪者に、本当に二度と再犯を犯させないためにはどうすればいいのか――というところを議論するべきです。
通報しなかった/できなかった乗客の心理については、ニューヨークで、Kitty Genovers事件という強姦殺人事件――38人もの目撃者がいながら、だれひとりとして、通報も救助も行わなかった――があって、それについて行われた心理学の分析があります。
今回の事件でなぜ通報が行われなかったのかを知る手がかりになるでしょう。
まえに、別件でこの分析に触れているので、ご興味のある方はご覧ください。
(⇒「仕事はひとりでやりなさい――チームワークと個人プレイヤーの仕事術」)
●一部抜粋-------
1964年のアメリカ・ニューヨークで、Kitty Genoversという女性が強姦された上、殺害されてしまうという事件が起こった。
驚くべきは、後の調べによって明らかにされた目撃者数――Kittyが暴漢に襲われた悲鳴を聞き、そして強姦されてから殺されるにいたるまでの30分もの時間に、それを目撃しながらも、通報も助けることもせず、ただ傍観していただけのひとたちが、なんと38人もいたというのだ。
当初、これは都会の人間の冷淡さや、目撃者たちにとって、普段抑制されているサディステッィクな欲求を充足するものだったなどとして話題に取り上げられたが、後に心理学者のLataneらは、それに真正面から異論を唱える――「否、Kittyが誰からも援助行動を受けることができなかったのは、むしろ大勢の目撃者がいたからこそなのではないか?」
まず、①大勢が見ていたことによって、ひとりあたりの責任感が分散され、軽くなる(責任の分散)が起き、「自分が援助行動を起さなくてもいいだろう。誰かがやるだろう」とする『社会的手抜き』が行なわれてしまったのではないか?
そして、②おなじことを目撃している他人を見ることによって、他人の判断をあてにする、換言すると、他人の判断から得た情報から、実在する現実とは違った『社会的現実』がそこに生じてしまい、ひとりひとりの判断が鈍化してしまったのではないか?
-------
記事は仕事という切り口ですが、Kitty Genovers事件において目撃者がなぜ通報しなかったのか、社会心理学の観点から解説しています。
#この記事は、改稿の上、FPN-新規事業とイノベーションを考えるニュースコミュニティにも寄稿しています。
(⇒http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2284)
公開1日ですでに 2万ビュー を超え、トップニュースになっています。
【関連記事】
「性犯罪、DV(ドメスティックバイオレンス)、PTSD……傷ついた方たちへ」
「仕事はひとりでやりなさい――チームワークと個人プレイヤーの仕事術」
「レイプ被害者・被害児の心理(4)~家族の受け止め方」
* 大川内 麻里のサイト OkawauhiMari.net *
* http://okawauchimari.net/ *
※参考(他社のより詳しい記事)
<強姦>特急内で暴行、容疑の36歳再逮捕 乗客沈黙
4月21日19時55分配信 毎日新聞
大阪府警淀川署は21日、JR北陸線の富山発大阪行きの特急「サンダーバード」の車内で昨年8月、大阪市内の会社員の女性(当時21歳)に暴行したとし
て、滋賀県湖南市石部南、解体工、植園貴光被告(36)を強姦(ごうかん)容疑で再逮捕した。当時、同じ車両には約40人の乗客がおり、一部の乗客は異変
に気付いたものの、植園容疑者にすごまれ、制止できなかったという。植園容疑者は、昨年12月にも同様に車内や駅構内で女性に暴行したとして今年1月、滋
賀県警に逮捕され、強姦罪などで現在公判中。
調べでは、植園容疑者は、昨年8月3日午後9時20分ごろ、福井駅を出発した直後に、6両目の前方から2、3列目にいた女性の隣に座り、「逃げると殺
す」「ストーカーして一生付きまとってやる」などと脅し、繰り返し女性の下半身を触るなどしたという。さらに、京都駅出発後の午後10時半ごろから約30
分間にわたり、車内のトイレに連れ込み、暴行した疑い。女性は車両前方のトイレに連れて行かれる途中、声を上げられず泣いていたが、付近の乗客は植園容疑
者に「何をジロジロ見ているんだ」などと怒鳴られ、車掌に通報もできなかったという。
植園容疑者は昨年12月21日、JR湖西線の普通電車内で女性(同27歳)に暴行し、さらに大津市のJR雄琴駅で電車を降り、同駅のトイレに女子大学生(同20歳)を連れ込み、暴行したとされる。
JR西日本によると、同社の大半の車両には連結部付近に通報ブザーをつけているほか、トイレにも体調悪化などに備えたブザーを設置。いずれも車掌に連絡
が届くようになっている。また、特急など停車駅間が長い列車の場合、車掌の車内巡回を励行しているという。同社広報部は「引き続き車掌の見回りなどを強化
し、乗客の安全確保、防犯対策に努めていきたい。事件を目撃したら通報ブザーを活用してほしい」と話している。【鵜塚健】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070421-00000074-mai-soci
特急車内で女性暴行=誰も通報せず、36歳男逮捕-大阪
4月22日2時0分配信 時事通信
特急電車内で女性に暴行したとして、大阪府警淀川署は21日、強姦(ごうかん)容疑で、滋賀県湖南市石部南、解体作業員、植園貴光容疑者(36)=別の
強姦事件で公判中=を再逮捕した。容疑を認めている。犯行の一部は乗客の目の前で行われていたが、誰も制止したり通報したりしなかった。
調べでは、植園容疑者は昨年8月3日午後9時20分ごろから1時間以上にわたり、JR北陸線の富山発大阪行き特急電車「サンダーバード」車内で21歳の 女性会社員の隣に座り、「大声出すな、殺すぞ。警察に言ったら、どこまでもストーカーするぞ」と脅迫。胸などをさわった後、車内の洗面所とトイレで乱暴し た疑い。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070422-00000004-jij-soci
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この記事へのコメントは終了しました。















コメント
この事件が起こって以来同じ女性として強い恐怖と絶望を感じていました。
40名の同乗者のこと、被害者女性が助けを求められなかったことなどいろいろいわれていますが、こちらの心理的説明で集団というものが時として暴力を黙認しその温床になってしまう一面ももちあわせていて、それは自分の中にも確実に存在するのだということがわかりました。
私自身暴行未遂を受けたことがありその当時は世の中のすべてが恐ろしく今回のことでもいろんなことがフラッシュバックしてきています。
だからこそ、なぜ助けなかったのだと今の社会を嘆く時期を通り過ぎたあとに識者の知識で解決の可能性を知りたいと思いました。
1)女性はそういう時声を上げることが金縛りのようにできなくなる場合があるということ。
2)集団には傍観者効果という作用が起こる場合があるのだということ。
3)この犯人は事故により性格が変わり(家族談)脳に何らかの障害が生じた可能性がありこのまま何の策も施すことなく放置するのは非常に危険なこと。
悲しいけれども今はこういう社会だということを踏まえたうえで、法律と警察と医学と心理学の助けを借りて、その上で集団である私たちが人間の心を取り戻してほんの少しの勇気を持てる社会になってゆくことができたらいいなと思いました。
同じ女性として、このように今回のことをきちんと説明してくださるサイトにたどり着き少し安心することができました、ありがとうございます。又被害を受けられた女性に心からの祈りをささげます。
投稿: そら | 2007/04/24 10:59
★そらさん★
はじめまして、コメントありがとうございます。
わたしも幼いころに遭った性犯罪によるPTSDで20年以上経ついまも悩まされています。
そらさんもそうであられたように、わたしも今回のことでフラッシュバックが起きました。
(優先すべきは治療ですが)
「あのとき8歳のわたしは殺された。心と身体をずだずだにされて殺されたのだ。
でもこうして命があり、生かされた。
この命をすべての女性たち、子どもたちのために使いたい。
わたしとおなじ目に遭わせないために。悔しいけれど、遭ってしまった女性や子どもたちのために」
そんなふうに考えるようになり、いま活動を展開しています。
PTSDがつらくて書きたくても書けないときもありますが、まず治療をしっかりしてから、と思いつつ動いています。
そらさんのように深く読み込んで理解していただけると、とてもうれしいです。こちらこそありがとうございます。
わたしも……被害女性の受けた傷は計り知れませんが、すこしでも回復に向かわれるよう、お祈りしています。
(被害女性にとって、裁判を戦い抜くことは、また非常に痛みを伴うもの。そこも司法のあり方を改善すべき点だと考えています)
そらさん、よろしければまた遊びにいらしてくださいませね^^
投稿: 大川内 麻里 | 2007/04/24 13:38
どうもこんにちは。都筑てんがと申します。
最も悪いのは「犯人」であるはずなのに、それ以上に「弱者」である乗客が叩かれている現状に「それはちょっとあんまりではないか」と思う自分がいます。
「40人もいれば…」という声がありますが、40人のうちに犠牲者がでたらどうするのか(2~3人ぐらい死んでも大目に見ろと?)。
もしあれが「単なる強姦魔」ではなく、銃刀類や有毒ガスを持ったテロリストでも同じ事が言えたか(自分以外の人にも危害が及ぶ可能性は無視?)。
数人の協力で逮捕したとして、出所後に「仲間」「手下」を引き連れて、逮捕協力者が一人一人「お礼参り」されたらどうするのか。
相手が精神科通院歴を持っていて、「責任能力なし」と判断されたらどうするのか(自分も現在進行形で精神科に通院していますし、3級の精神障害者手帳も持っているので、あまりそういう事を言えた身分ではないのですが…。)。
「義を見てせざるは勇なきなり」とはいいますが、「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」という現実がある訳で…。
そういう事を色々と考えると、「弱者」である乗客を責められない自分がいます。
恐らく、自分がその場にいたとしても、何も出来なかったのではないか…と思います。
投稿: 都筑てんが | 2007/04/25 11:34
はじめまして。「村野瀬玲奈の秘書課広報室」というブログをやっております。こちらの記事を間接的に参考にさせていただいて記事を書きましたのでトラックバックさせていただきました。特に男性が力の行使を正当化するときのご都合主義への皮肉を込めたつもりです。
投稿: 村野瀬玲奈 | 2007/11/12 20:51